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1話を作る前、打ち合わせでは杉井監督、僕とCXのOプロデューサーの意見が常にすれ違い東宝のFさんが調整役だった。
食い違ったのはどういう風に視聴率をとるのか、の違いだった。
ゴールデンタイムのTVで視聴率をとるために、
幅広く視聴者をとる=見やすく判りやすく作ろうとするOさんと僕と、
漫画原作のもつドラマ性を映画的に表現しようとする=狭く深く作ろうとする杉井さん、という図式だろうか。
たとえば、空の色。今でも思い出す杉井さんの一言「空が青いって誰が決めたんだッ」
意見の食い違いは、いつも従来TVアニメの基本とされていたことと、
杉井さんが立てた演出プランの違いだった。
たとえば空はきちんと青く塗る、
これに対し、杉井さんは空は無色にしたい、なぜならこの作品に必要な透明感を出したいから。
でも空が無色だったら、手抜きしたと思われる。
僕が髪の毛の黒、学生服の黒はNG、なぜなら画面が重く暗くなる、そうなると視聴者が離れる。
それに対し、杉井さんは髪の毛は黒髪が基本、学生服も黒が基調、と譲らなかった。
なぜならアニメといえど、日常的なリアリティーを大事にしたいから。
杉井さんが登場人物の心情をじっくり伝えたいから、
キャラクターがたとえば考え込んでいるときなど、無音の時間を長くしたい、
TVでの無音はチャンネルを切り替えられるか放送事故だと思われるからNG。
音楽が鳴っていれば眼は画面に来るからBGMは常に流すべき・・・。
音楽のつけ方、テンポ感、物語の進展度合い=一話に入れる物語の量=脚本の速度、
サブタイトルのつけ方、なんでも議論になった、でも声優のキャスティングでは不思議に一致した。
杉井さんは、空の色は画面の真ん中は無色にするが周辺は青く塗る、
など妥協もしたけどほとんどは彼の演出プランを貫いた。
それが正解だった。
その結果、TVアニメ「タッチ」は最高視聴率で30%を超えた。
第一話のCX社内試写で「こんな古臭いドラマっぽいアニメで数字取れると思ってるのか、受け取れない、作り直せ!」と
当時の編成部長からしかられた。高校の先輩だったので、つい激しく叱ってくれたのだったが、
でももう一話の完成時には杉井さんの演出を理解していたし、
僕なりにこれは小津映画のTVアニメ版なんだという変な」割り切りをしていたのでひるまなかった。
「絶対これで数字を取ります、やらせてください」、と譲らず、放送に持ち込んだ。
一話の視聴率は確か、22%ぐらいだったと思う。20%を超えれば成功だった。
片岡義朗の日記 - 関心空間 (via tnoma)
(via reretlet)